「うちの子はしつけができていないから……。」
愛犬が吠える、引っ張る、飛びつく、噛む、落ち着かない。そんな姿を見て、自分を責めたり、「もっと厳しく教えなければ」と考えたりした経験はありませんか。
もちろん、人と犬が安全で快適に暮らすためには、基本的なしつけやルールを教えることはとても大切です。しかし、犬が見せるすべての「困った行動」を、しつけ不足だけで説明することはできません。
近年では、犬の行動学が進み、「問題行動」と呼ばれる行動の多くは、犬が何かを伝えようとしているサインであると考えられるようになっています。
例えば、知らない人に吠える犬は、本当に相手を威嚇したいのでしょうか。
散歩中に他の犬へ激しく吠える犬は、本当にわがままなのでしょうか。
家の中で家具を壊したり、留守番中に鳴き続けたりする犬は、ただ飼い主を困らせたいだけなのでしょうか。
その行動の裏には、恐怖や不安、ストレス、興奮、環境の変化、体の痛みなど、さまざまな理由が隠れていることがあります。
私は犬専門のカメラマンとして、これまで数多くの犬たちを撮影してきました。
初めて訪れる場所でも楽しそうに過ごす犬がいる一方で、周囲の音や人の動きに緊張してしまう犬もいます。撮影が始まるとすぐに笑顔を見せてくれる犬もいれば、安心できるまで時間が必要な犬もいます。
どちらが「良い犬」で、どちらが「しつけができていない犬」ということではありません。
犬にはそれぞれ性格があり、育ってきた環境があり、その日の体調や気持ちがあります。そして、そのすべてが行動となって表れます。
だからこそ、目の前の行動だけを見て判断するのではなく、「なぜこの行動をしているのだろう」と考えることが、愛犬を理解する第一歩になります。
この記事では、「問題行動」と呼ばれる行動の背景にはどのような理由があるのか、そして飼い主としてどのように向き合えばよいのかを、犬の行動学の考え方と、犬専門カメラマンとして現場で感じてきた経験を交えながらお伝えします。

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問題行動には必ず理由がある
犬と暮らしていると、「どうしてこんなことをするのだろう」と悩む場面に出会うことがあります。
家具を噛んでしまう。
散歩中に他の犬へ吠えてしまう。
来客に対して警戒する。
飼い主の言葉を聞かず、興奮してしまう。
こうした行動は、一般的に「問題行動」と呼ばれることがあります。
しかし、犬の立場から見ると、それは単なる「困った行動」ではなく、何かを伝えるためのサインである可能性があります。
例えば、散歩中に他の犬へ吠える犬がいたとします。
飼い主からすると、「吠えるのをやめさせたい」「もっとしつけをしなければ」と考えてしまうかもしれません。
ですが、その犬は本当に相手を攻撃したいのでしょうか。
実際には、怖さや不安を感じていたり、「これ以上近づいてほしくない」と伝えようとしていたりする場合があります。
つまり、吠えるという行動だけを見ると「悪いこと」に見えても、その背景には犬なりの理由が隠れていることがあります。
犬は人間の言葉を話すことができません。
だからこそ、行動や表情、体の変化によって自分の気持ちを伝えています。
落ち着かず歩き回る。
急に吠える。
飼い主から離れようとする。
特定の場所を嫌がる。
これらは単なる「わがまま」ではなく、「今の状況が少し苦手」「不安を感じている」という犬からのメッセージかもしれません。
問題行動を改善するために大切なのは、まず行動そのものを止めることだけではありません。
「なぜ、この行動をしているのか」
そこに目を向けることが、愛犬を理解する第一歩になります。
犬は困らせるために行動しているわけではない
犬の行動について考えるとき、多くの飼い主さんが一度は感じることがあります。
「わざとやっているのでは?」
「飼い主を試しているのでは?」
「言うことを聞かないのは反抗しているから?」
しかし、犬は人間を困らせる目的で行動しているわけではありません。
もちろん、犬にも学習能力があります。
「この行動をすると飼い主が反応してくれる」
「吠えると要求が通った」
という経験から、ある行動が習慣になることはあります。
ですが、その根本には必ず、その犬なりの理由や経験があります。
例えば、留守番中に家具を壊してしまう犬。
「いたずら好きな性格だから」と思われることがありますが、実際には退屈や不安、エネルギーの発散不足など、別の理由が隠れている場合があります。
また、触られることを嫌がる犬も、「飼い主に逆らっている」のではありません。
過去の経験や性格によって、人との距離感を慎重に考えているだけかもしれません。
犬には犬の感じ方があります。
人間にとっては何でもない出来事でも、犬にとっては大きなストレスになることがあります。
大きな音。
知らない場所。
初めて会う人。
急な動き。
過度な接触。
そうした刺激に対して、犬は自分を守るために行動します。
その行動を「悪い」と決めつけてしまうと、犬が発している小さなサインを見逃してしまうことがあります。
まずは「なぜ?」を考えることが大切
犬の問題行動と向き合うとき、一番大切なのは「どうやって直すか」を考える前に、「なぜ起きているのか」を考えることです。
例えば、吠える犬に対して、ただ「吠えないようにする」ことだけを考えてしまうと、本当の原因が解決されない場合があります。
怖がっている犬に必要なのは、叱ることではなく、安心できる経験を積み重ねることかもしれません。
興奮しやすい犬には、落ち着いて過ごせる環境づくりが必要かもしれません。
人との関わりが苦手な犬には、無理に慣れさせるのではなく、その犬のペースを尊重することが大切かもしれません。
行動だけを見るのではなく、その奥にある気持ちを見る。
これは犬と暮らすうえで、とても大切な考え方です。
私自身、犬専門カメラマンとして多くの犬たちと接する中で、このことを強く感じています。
撮影の現場では、初めて会う場所や初対面の人、普段とは違うカメラという存在など、犬にとって慣れない環境がたくさんあります。
最初は緊張して動けなかった犬が、飼い主さんの声や安心できる時間の中で少しずつ表情を変えていくことがあります。
その瞬間に見せてくれる表情は、「良い子にできたから撮れた写真」ではありません。
犬が安心して、「自分らしくいられる状態」になったからこそ生まれる表情です。
問題行動も同じです。
見えている行動だけで判断するのではなく、その裏側にある気持ちを理解することで、愛犬との関係はもっと深まります。
「なぜ、この行動をするのだろう?」
その問いかけから始めることが、犬を理解するための大切な一歩なのです。

犬の問題行動について考えるとき、多くの人が最初に思い浮かべるのは「しつけが足りないのではないか」ということかもしれません。
確かに、人と犬が一緒に暮らしていくためには、基本的なルールを教えることは大切です。
しかし、犬が見せる行動のすべてを「しつけ不足」という一言で片付けてしまうと、本当の原因を見逃してしまうことがあります。
犬の行動には、性格や過去の経験、その時の環境、体調など、さまざまな要素が関係しています。
同じ「吠える」という行動でも、その理由は犬によってまったく違います。
怖くて吠えている犬もいれば、興奮して吠えている犬もいます。
遊びたい気持ちから吠える犬もいれば、不安を感じて自分を守ろうとしている犬もいます。
大切なのは、「何をしているか」だけを見るのではなく、「なぜその行動をしているのか」を考えることです。
恐怖や不安が行動として表れることがある
犬の問題行動を考えるうえで、特に大きな要因になるのが「恐怖」や「不安」です。
人間でも、怖い場所に行ったり、苦手な人と会ったりすると、緊張したり、その場から離れたくなったりします。
犬も同じです。
例えば、散歩中に他の犬を見ると吠えてしまう犬。
飼い主さんから見ると、「他の犬と仲良くできない」「攻撃的な性格なのかな」と感じるかもしれません。
しかし実際には、過去に怖い経験をしたことがあったり、どう接すればよいのか分からなかったりして、不安な気持ちを吠えることで表現している場合があります。
また、動物病院が苦手な犬や、知らない人に警戒する犬もいます。
その姿だけを見ると「臆病」「社会性がない」と思われることがありますが、その犬にとっては自分を守るための自然な反応かもしれません。
犬は「怖い」という感情を言葉で伝えることができません。
そのため、距離を取る、吠える、逃げる、固まるといった行動で気持ちを表現します。
問題なのは、その感情を持つことではありません。
大切なのは、その気持ちに気付かず、無理に状況へ慣れさせようとしてしまうことです。
犬が安心できる環境を作り、少しずつ「大丈夫だった」という経験を積み重ねることが、行動改善につながります。
ストレスや環境の変化も行動に影響する
犬の行動は、普段暮らしている環境からも大きな影響を受けます。
人間にとっては小さな変化でも、犬にとっては大きなストレスになることがあります。
例えば、
・引っ越しをした
・家族構成が変わった
・生活リズムが変化した
・新しい犬や人が家に来た
・運動量が減った
こうした変化によって、今まで問題なかった犬が急に吠えるようになったり、落ち着きがなくなったりすることがあります。
また、犬は本来、体を動かしたり、匂いを嗅いだり、周囲を探索したりすることで心身のバランスを保っています。
十分にエネルギーを発散できない状態が続くと、家具を噛む、家の中を走り回る、要求吠えが増えるなどの行動につながることもあります。
これは「わがままになった」のではありません。
犬が持つ本能的な欲求が満たされていない可能性があります。
撮影の現場でも、普段と違う環境に戸惑う犬を見ることがあります。
初めて訪れる場所、知らないスタッフ、見慣れないカメラ。
犬によっては最初から楽しそうに動き回る子もいれば、飼い主さんの近くから離れられない子もいます。
そんな時、無理にポーズを取らせるよりも、まずはその場所に慣れる時間を作ります。
少し匂いを嗅ぐ。
周囲を確認する。
飼い主さんの声を聞く。
そうした時間を過ごすことで、少しずつ本来の表情を見せてくれる犬はたくさんいます。
犬にとって安心できる環境を作ることは、行動を変えるうえでとても重要なのです。
痛みや体の不調が隠れていることもある

問題行動が突然始まった場合、性格やしつけだけを疑うのではなく、体の状態にも目を向ける必要があります。
例えば、今まで触られることを嫌がらなかった犬が、急に触られることを嫌がるようになった場合。
それは「わがままになった」のではなく、どこかに痛みや違和感がある可能性があります。
犬は体調不良を言葉で伝えることができません。
そのため、普段とは違う行動として表れることがあります。
急に怒るようになった。
散歩を嫌がるようになった。
抱っこを嫌がるようになった。
落ち着きがなくなった。
こうした変化には、何らかの理由が隠れているかもしれません。
もちろん、すべての行動変化が体調不良によるものではありません。
しかし、「最近急に変わった」という場合には、しつけの問題と決めつけず、犬の健康状態も確認することが大切です。
犬の行動を見るときに必要なのは、「直すべき行動」と考える前に、「何を伝えようとしているのか」を考えることです。
問題行動の裏側には、犬からの大切なメッセージが隠れているかもしれません。
犬の問題行動に悩んだとき、多くの飼い主さんが最初に考えることがあります。
「どうしたらこの行動をやめさせられるのだろう」
もちろん、人と犬が一緒に暮らすためには、危険な行動や生活に支障が出る行動を改善していくことは大切です。
しかし、その方法として「ただ叱る」という対応をしてしまうと、場合によっては問題が解決しないだけでなく、犬の不安や恐怖を強めてしまうことがあります。
大切なのは、行動だけを見て止めようとするのではなく、その行動の裏側にある犬の気持ちを理解することです。
犬の行動を変えるためには、まず犬が安心して学べる状態を作る必要があります。
叱ることで行動が悪化するケースもある
犬が困った行動をした時、「ダメ」と伝えたり、注意したりすること自体がすべて間違いというわけではありません。
人と暮らす中で、犬に守ってほしいルールを伝えることは必要です。
しかし、犬がなぜその行動をしているのかを考えずに叱ってしまうと、犬は「何が悪かったのか」を理解できない場合があります。
例えば、怖がって吠えている犬に対して強く叱ったとします。
飼い主さんとしては「吠えるのをやめてほしい」という気持ちから行動しているかもしれません。
しかし犬からすると、「怖いものがある」だけでなく、「飼い主さんにも怒られている」という状況になってしまいます。
その結果、犬の中で、
「知らない人や犬を見る」
↓
「怖い」
↓
「吠える」
↓
「さらに嫌な経験になる」
という流れができてしまうことがあります。
また、飼い主さんが大きな声で反応することで、犬によっては「一緒に興奮してくれている」と受け取ってしまうこともあります。
特に興奮しやすい犬の場合、飼い主さんの反応そのものが刺激になってしまうことがあります。
大切なのは、「その行動を止めること」だけを目的にするのではなく、「その行動が必要なくなる状態」を作ることです。
安心して学べる環境づくりが第一歩
犬が新しいことを学ぶためには、安心できる気持ちがとても重要です。
人間でも、不安や緊張でいっぱいの状態では、落ち着いて物事を覚えることは難しいものです。
犬も同じです。
怖い。
緊張している。
興奮している。
そんな状態では、飼い主さんの声を聞いたり、正しい行動を考えたりする余裕がなくなってしまいます。
そのため、まず必要なのは「できなかったことを責めること」ではなく、「できる環境を作ること」です。
例えば、他の犬を見ると吠えてしまう犬の場合。
いきなり近距離で他の犬と会わせるのではなく、犬が落ち着いていられる距離から少しずつ慣れていくことが大切です。
また、家の中で落ち着けない犬には、静かに休める場所を作ったり、十分な運動や遊びの時間を確保したりすることも必要です。
犬に何かを教える前に、「この環境なら安心できる」と感じてもらうこと。
それが学習のスタートになります。
撮影の現場でも、この考え方はとても大切にしています。
初めて会う犬に対して、いきなりカメラを向けて「こっちを見て」とお願いしても、犬にとっては理解できない状況です。
知らない人。
知らない場所。
大きなカメラ。
犬からすれば、不安になる要素がたくさんあります。
だからこそ、最初は無理に撮影を始めません。
匂いを嗅ぐ時間を作る。
飼い主さんと遊ぶ。
周囲を確認する。
犬が「ここは大丈夫」と感じる時間を作ることで、少しずつ自然な表情が出てきます。
原因に合わせた対応が改善への近道
犬の問題行動を改善するとき、一番大切なのは「すべての犬に同じ方法を当てはめないこと」です。
同じ吠えるという行動でも、理由は犬によって違います。
怖くて吠えている犬。
遊びたくて吠えている犬。
興奮して吠えている犬。
飼い主さんに何かを伝えたくて吠えている犬。
原因が違えば、必要な対応も変わります。
例えば、怖がっている犬に必要なのは、強く注意することではありません。
安心できる経験を積み重ね、「怖くないかもしれない」と感じられるようにすることです。
逆に、退屈や運動不足が原因で落ち着かない犬には、適切な遊びや刺激を増やすことが必要かもしれません。
問題行動を改善するということは、犬を無理に変えることではありません。
犬が安心して過ごせる環境を整え、飼い主さんとの関係の中で「どう行動すればいいのか」を学べるようにサポートすることです。
犬は決して、人間を困らせるために生きているわけではありません。
その行動の奥には、必ずその犬なりの理由があります。
だからこそ、まず向き合うべきなのは「その行動」ではなく、「その行動を生み出している犬の気持ち」なのです。
犬の気持ちを理解すること。
それが、本当の意味でのしつけの第一歩なのかもしれません。

犬と日々向き合う中で感じることがあります。
それは、犬の表情や行動には、その子が過ごしてきた時間や飼い主さんとの関係性が表れるということです。
写真撮影という仕事では、普段の生活とは少し違う環境で犬と向き合うことになります。
初めて訪れる場所。
知らない人との出会い。
見慣れないカメラ。
いつもとは違う空気感。
犬にとっては、決して当たり前の状況ではありません。
そんな環境の中で、最初から自然な表情を見せてくれる犬もいれば、少し時間が必要な犬もいます。
しかし、そこで大切なのは「すぐに撮影できる犬が良い犬」ということではありません。
犬にはそれぞれ性格があり、安心するまでの時間も違います。
その違いを理解することが、犬と向き合ううえで何より大切だと感じています。
撮影中に見える犬たちの個性
犬専門カメラマンとして多くの犬を撮影していると、本当に一頭一頭に個性があることを実感します。
初めて会った瞬間から楽しそうに近づいてきてくれる犬。
少し距離を取りながら、周囲の様子をじっくり確認する犬。
飼い主さんのそばにいることで安心できる犬。
好奇心旺盛に、撮影場所を探索する犬。
どの姿も、その犬らしさの一部です。
例えば、撮影開始直後はカメラを避けていた犬が、時間が経つにつれて少しずつ近づいてきてくれることがあります。
最初は緊張していた表情が柔らかくなり、耳や尻尾の動きが変わり、自分から自然な仕草を見せてくれる。
その変化を見る瞬間は、犬と関わる仕事をしていて特に嬉しい瞬間のひとつです。
もし、その最初の緊張した状態だけを見て、
「この子は落ち着きがない」
「撮影が苦手な犬だ」
「しつけができていない」
と判断してしまったら、本当の姿を見ることはできません。
犬には犬のペースがあります。
そのペースを尊重することで、初めて見えてくる表情があります。
これは撮影だけではなく、日常生活でも同じことが言えるのではないでしょうか。
「待て」ができることより信頼関係が大切
犬の撮影では、「おすわり」や「待て」といった基本的なコマンドが役立つ場面があります。
しかし、素敵な写真を残すために一番大切なのは、完璧に指示を聞けることではありません。
本当に大切なのは、犬と飼い主さんの間にある信頼関係です。
例えば、飼い主さんの声を聞くと安心する犬。
飼い主さんが近くにいることで落ち着いて周囲を見ることができる犬。
不安な時に飼い主さんの存在を頼りにできる犬。
こうした関係性がある犬は、自然な表情を見せてくれることが多いです。
反対に、撮影中ずっと「動かないで」「こっちを見て」と指示され続けると、犬によっては緊張してしまうことがあります。
もちろん、ルールを教えることは大切です。
しかし、犬との暮らしで本当に大切なのは、ただ言うことを聞かせることではありません。
「この人と一緒なら安心できる」
そう犬が感じられる関係を作ることです。
信頼関係があるからこそ、犬は飼い主さんの声を聞き、安心して新しいことにも挑戦できます。
しつけとは、犬をコントロールするためのものではなく、人と犬がお互いに暮らしやすくなるためのコミュニケーションなのだと思います。
写真には普段の暮らし方が表れる
撮影で犬の写真を残していると、表情の奥にあるものが見えることがあります。
楽しそうな表情。
安心した表情。
飼い主さんを見る優しい目。
そうした一瞬には、普段どのように暮らしているのかが自然と表れます。
もちろん、撮影当日の技術だけで写真を作ることはできません。
犬が安心できること。
飼い主さんとの関係が築かれていること。
その子らしく過ごせること。
そうした日々の積み重ねが、写真の中に残ります。
逆に、緊張している犬に無理をさせたり、嫌がっているサインを見逃したりすると、その犬らしい表情にはなかなか出会えません。
だからこそ私は、撮影の時も「どうすれば犬を動かせるか」ではなく、「どうすれば犬が安心できるか」を大切にしています。
犬が安心すると、自然と表情が変わります。
飼い主さんの声に反応する瞬間。
楽しそうに歩く姿。
ふと見せる穏やかな顔。
そうした何気ない瞬間こそ、その子らしさが一番表れる瞬間です。
問題行動について考える時も、同じことが言えます。
見えている行動だけで犬を判断するのではなく、その背景にある気持ちを見る。
犬が何を感じ、何を伝えようとしているのかを考える。
その視点を持つことで、愛犬との関係はもっと深く、もっと楽しいものになるはずです。
犬専門カメラマンとして、たくさんの犬たちと向き合ってきたからこそ伝えたいことがあります。
犬は、ただ「しつける存在」ではありません。
理解し、寄り添い、一緒に成長していく大切な家族です。
こまでお伝えしてきたように、犬の問題行動には必ず何らかの理由があります。
だからこそ、問題が起きてから「どうやって直そう」と考えることも大切ですが、それ以上に大切なのは、問題が起こりにくい関わり方を日頃から意識することです。
犬は毎日の暮らしの中で少しずつ学び、飼い主さんとの関係を築いていきます。
特別なトレーニングだけが「しつけ」ではありません。
毎日の散歩、遊び、食事、声かけ、スキンシップ。そのすべてが、犬にとっては学びの時間です。
だからこそ、日常の積み重ねが、将来の問題行動を防ぐ大きな力になります。
社会化は一生の財産になる
子犬の頃に耳にすることが多い「社会化」という言葉ですが、その目的は「誰とでも仲良くできる犬に育てること」ではありません。
本当の目的は、「さまざまな環境や出来事に対して、過度な不安や恐怖を感じにくくすること」です。
人、自転車、車の音、子どもの声、公園、動物病院など、日常には犬にとって初めて経験することが数多くあります。
そうした経験を無理のない範囲で少しずつ積み重ねることで、「これは怖いものではない」と学んでいくことができます。
もちろん、社会化は子犬だけのものではありません。
成犬になってからでも、その犬のペースに合わせて新しい経験を積み重ねることはできます。
大切なのは、「慣れさせること」ではなく、「安心して経験できること」です。
焦らず、一歩ずつ経験を増やしていくことが、犬の自信につながります。
日常のコミュニケーションが信頼関係を育てる
犬との信頼関係は、特別なことをして築くものではありません。
毎日の何気ないやり取りの中で、少しずつ育まれていくものです。
散歩中にアイコンタクトを取ること。
名前を呼んだら笑顔で応えてあげること。
落ち着いて過ごしている時に優しく声をかけること。
犬が安心できるタイミングでスキンシップを取ること。
こうした積み重ねが、「飼い主さんと一緒にいると安心できる」という気持ちを育てます。
反対に、困った時だけ怒られたり、常に指示ばかり受けたりしていると、犬は飼い主さんを「安心できる存在」と感じにくくなってしまうことがあります。
もちろん、ルールを教えることは必要です。
しかし、それ以上に大切なのは、「この人と一緒なら大丈夫」と思ってもらえる関係を築くことではないでしょうか。
信頼関係がある犬は、新しいことにも挑戦しやすくなり、困った時にも飼い主さんを頼ることができます。
それが、結果として問題行動を減らすことにもつながっていきます。
飼い主が学ぶことが犬の安心につながる
しつけ教室」という言葉を聞くと、「犬が勉強する場所」というイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし実際には、犬だけではなく、飼い主さん自身が犬の気持ちや接し方を学ぶことも、とても大切です。
犬は一頭一頭、性格も得意なことも苦手なことも違います。
だからこそ、「この方法ならすべての犬がうまくいく」という正解はありません。
愛犬の様子をよく観察し、その子に合った関わり方を考えることが何より大切です。
今回の記事でお伝えしてきたように、問題行動には理由があります。
その理由を知ろうとする姿勢が、愛犬を理解することにつながります。
犬を変えようとする前に、まず飼い主さんが犬について学ぶ。
その積み重ねが、犬にとって安心して暮らせる毎日を作っていくのだと思います。
「問題行動」という言葉を聞くと、「しつけが足りない」「もっと厳しく教えなければ」と考えてしまうことがあります。
しかし、犬の行動をよく見てみると、その裏には恐怖や不安、ストレス、環境の変化、体調など、さまざまな理由が隠れていることがあります。
大切なのは、目の前の行動だけを見て判断しないこと。
「なぜ、この子はこの行動をしているのだろう?」
そんな視点を持つことで、これまで見えなかった愛犬の気持ちに気付けるかもしれません。
私も犬専門カメラマンとして多くの犬たちと出会ってきましたが、一頭として同じ犬はいません。
すぐに打ち解けてくれる犬もいれば、少し時間をかけて安心してくれる犬もいます。
だからこそ、その子のペースを尊重し、気持ちに寄り添うことを何より大切にしています。
写真に写る自然な笑顔は、無理に作られたものではありません。
飼い主さんとの信頼関係や、安心できる環境の中で過ごしているからこそ見せてくれる、その子らしい表情です。
犬との暮らしも同じです。
「しつけ不足」と決めつける前に、愛犬が何を伝えようとしているのかに耳を傾けてみてください。
その小さな気付きが、愛犬との毎日をもっと豊かで、もっと楽しいものにしてくれるはずです。

今日も最後までお読みいただきありがとうございます!ではっ。

